国連世界観光機関によりますと、観光産業は世界全体のGDP の約1割を占め、世界の雇用者の10人に1人が従事する一大産業となっています。持続可能性の議論が様々なところで進んでおり、またSDGsの17の目標及び169のターゲットの多くに観光産業が関わってくるのも当然の事と思われます。SDGsが観光ビジネス、とりわけ誘客にどのように影響するかこちらのセッションで取り上げてまいります。
「大阪泉州における食文化の旅-SDGsなアプローチを探る」オンラインセミナー
これまで当たり前のこととして見過ごしがちであった大阪ならではのSDGsに通じる食文化や精神性「始末の心」に着目し、2025年大阪・関西万博に向けて「食のまち・大阪」が目指す新しい地域のあり方を探るセミナーで、泉州地域の事例をもとに、食×観光×SDGsという新たなアプローチとなりました。
Session1これからの観光になぜSDGsが必要か
(一般社団法人日本食文化観光推進機構理事 田中様)
PRプランナー/空間プロデューサー(一級建築士)(一社)日本食文化観光推進機構 理事
1960年生まれ。メーカー勤務を経て、’97年(株)読売広告社に入社。事業、コンテンツ開発部門を約15年間率い、自治体の観光PR、イベント、産品マーケティング等の業務に従事。
‘20年同社を退職して現在に至る。
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世界の旅行トレンドとSDGsについて
7−8年ほど前から地球温暖化問題をきっかけとする意識の高まりやオーバーツーリズムへの反省があり、環境やサステナビリティへの配慮という切り口が出てきていたのですが、その新しい切り口がSDGsに集約され、最近ではコロナの影響もあって旅のメインテーマの一つに急浮上しました。その典型例が、NYタイムズの『今年行きたい52カ所』に表れています。今年の52カ所はSDGsという観点で選ばれているところばかりで、 「2022年のリストは、世界中で旅行者が問題解決に寄与できる場所を選択」と説明されています。
(時事通信社 大嶋様)
経済担当特派員として、ロンドンとニューヨークで通算8年間勤務。
海外のSDGsやメディア動向に詳しい。
自治体向けインバウンド観光支援事業で、メディアコーディネーターや英語記事の編集・監督も担当。
コロナ後の旅行のグローバルトレンドを紹介
トレンド1:ステイケーションから短距離旅行、そして長距離旅行へ? コロナウイルスの相次ぐ波の中で、欧米では国内・短距離旅行への関心が高まり、旅行メディアの記事にもこうした傾向が表れました。 旅行規制の緩和が進むにつれ長期の旅行が増加し、長期間の巣ごもりの反動で「ドリームトラベル(夢の旅行)」への欲求が高まる、との見通しも出ています。これは日本にとってチャンスではないでしょうか? トレンド2:人の行かないところへ、そして長期滞在? これから「オフ・ザ・ビートン・パス(人の行かないところへ)」と長期滞在の2トレンドが合わさるかもしれません。人々は、観光化されたところより、「オーセンティック」で「リアル」な場所を体験したいという考えを持ち、これまで観光客があまり行かなかった地域のチャンスが増える可能性があります。 トレンド3:旅行業界のサステナビリティ、ダイバーシティ推進への期待が高まる ダイバーシティは重要です。日本はどうすれば、もっと多様な旅行者をおもてなしできるでしょうか。好例は、大阪のLGBTQ旅行者向けのウェブサイト「Visit Gay Oska」で、日本で最初の本格的なLGBTQ旅行者向け英語サイトです。宣伝資料の工夫、宗教・倫理感のニーズに配慮した料理の提供、メッセージ発出などの努力も有効です。
(トラベルライター ロブゴス様)
日本を拠点とする英国人トラベルライター。
日本の観光情報をナショナルジオグラフィック・トラベル誌などに寄稿。
2020年の世界旅行メディア連盟(GTMA)の最優秀トラベルライター賞の最終候補。
これまでに「Japanese Inns and Hot Springs」などの自著7冊。
Session2「食」を通じた地域おこしについて
SDGs的側面から見たご当地グルメとその発掘の視点
(愛Bリーグ本部専務理事 俵様)
一般社団法人愛Bリーグ本部 専務理事
東北大学電子工学科卒。リクルートで旅行情報誌事業の自治体企画等担当後、独立。
地域ならではの食に精通し、60地域以上の食のまちおこしに携わる。
’09年「B-1グランプリ」主催団体愛Bリーグ事務局長。’11年より現職
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(愛Bリーグ本部専務理事 俵様)
Session3大阪泉州地域の食文化の魅力を探る
泉州の食文化観光におけるサスティナブルポイント
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二つ目は『サスティナブル志向の生産者が既にいる』ということです。流通を抜本的に変えることでエコでストレスフリーな肥育を実践している、なにわ黒牛の松田さんを始め、江戸時代から続く泉州の伝統的農業を守っておられる射手矢農園の射手矢代表、いずみふれあい農の里でまさにSDGsに沿った活動をしている浅井さんなど、熱心に取り組む生産者の姿は素敵で応援したくなります。 三つ目は『魚(な)の庭を守るための水産資源再生』です。アナゴは泉州エリアの名物ですが、年々漁獲量が減少していることから関空対岸の岡田浦漁業協同組合では近畿大学の協力のもと、アナゴの養殖に力を入れています。豊かな海を保全し、地の魚を食べることは輸入に比べて使用エネルギーも少なく、SDGs目標14の『海の豊かさを守る』にフィットしています。また環境保全ための地元漁師による植林は、目標15『陸の豊かさも守る』にあたると言えます。観光目線では泉州各地の魚市場に行けば新鮮な地魚が手に入り、地元の海鮮料理も楽しめ、旅行者にとって価値ある取り組みだと言えます。 四つ目は『日本の食文化を支えてきた堺の存在』です。600年の歴史を誇る堺打刃物は食文化と最も密接に繋がっています。府内唯一の刀匠でもある明治5年創業の水野鍛錬所 五代目の水野淳(みずのじゅん)さんによると、板場割烹の職人のほぼ100%が堺の包丁を使っているだろうとのこと。また、包丁が無形文化遺産である和食を支えるもっとも大切な道具である点から、まさにSDGs目標11の4にある『文化遺産の保全』にも繋がってくると思います。
(一般社団法人日本食文化観光推進機構理事 田中様)
泉州の旅はバックステージツアーと位置付けると面白い
(時事通信社 大嶋様)
SDGsな視点も含めた視察先の感想
(トラベルライター ロブゴス様)
泉州のご当地メニューのポテンシャル
(愛Bリーグ本部専務理事 俵様)